昔、箱根 芦ノ湖は、万字が池といって箱根権現の御手洗の池といわれていました。
 奈良時代から平安時代のはじめにかけてのことでした。夜になると池の西の住家から飛び出し、荒波を蹴立てて村にやってきては、人々に恐怖と危害を加える、とてつもなく巨大な怪獣、毒龍がいました。特に機嫌を損ねると暴れまわり、若い年頃の娘をさらったり、また、恐ろしい水害や疫病をはやらせて、村人を苦しませていました。そこで、古老を中心に村人は集まり、あれやこれや相談した結果、残酷なことだが、せめて犠牲者を少なくするため、毒龍の機嫌をとろうと、人身御供の娘をさしだす事にしました。
 ちょうどその頃、箱根の山に万巻上人というお坊さんが修行に来ていました。一万巻の経文を唱えたことから万巻上人と呼ばれる仏法の力をそなえた偉いお坊さんです。このことを聞いた万巻上人は、村に降りて来て、「それは非道なことじゃ、よしこの私がそんなことをしなくてよいように、御仏のお力でその毒龍を退治してやろう」といって、娘を生けにえに沈めるかわりに、池の底に向かって石段を造らせました。そして、祭壇を築き、三、七、二十一日、祈祷をつづけました。その声は静かな水面を伝わり、うっそうと繁った対岸の樹木にこだまし、高く低く、地底にひそむ毒龍に呼びかけるようにつづけられました。
 今日は満願という七月三十一日、上人の読経の声が最高潮に達し池面を震わせた時、池にみるみる渦が巻き、渦の真ん中からその毒龍が姿を現すと、静かに上人の前まで泳いできて頭を下げました。その片手には数珠と錫杖を持ち、もう一方の手には水瓶を持って、「どうぞお許し下さい。もう悪いことはいたしません」と、今までの罪をわびて深々と謝りました。さすがの毒龍も、上人の燃えるような仏の慈悲心にはかなわずに改心したのでしょう。そこで上人は、毒龍を鉄の鎖でつないで水底の逆さ杉に結びつけ、その頭を水晶の数珠でなでました。すると不思議にも、毒龍の頭が二つ、三つと増えていって、九つの頭の龍神になりました。万巻上人はようやく毒龍の罪を許してやり、これからは龍神として万字が池と村を守るようにしなさいといって、その化身を九頭竜明神とし、水辺に祠を建てて、市杵島姫尊と一緒に祀ってやりました。
 毎年、八月一日の箱根神社の大祭の前夜祭として行なわれる七月三十一日の湖水祭は、この九頭竜の霊を慰めるお祭りです。
 
参考:「箱根の民話と伝説」安藤正平、古口和夫著
発行:夢工房

 ここに紹介させていただいた代表的な伝説の他にも箱根には、龍神にまつわる言い伝えはまだまだあります。九頭龍神社は芦ノ湖の九頭龍伝説を今に伝える龍神信仰の聖地として、芦ノ湖坊ヶ沢に建立されております。またそこから湖沿いを少し元箱根方面に行くと、白龍神社が建立されております。
 当店では 箱根の龍をモチーフにした商品を販売しております。
 

お取り扱い上の注意事項
※お手入れは柔らかい布を使用して軽く拭いて下さい。
※シルバーと水晶部分の接着剤を使用しておりますので、長時間水に浸けますと接着効果が弱くなる場合がございます。

 
English version of the
food menu is here.
箱根湖畔荘LINE
 
LINEアイコン
 
LINE 毎朝更新!
箱根湖畔荘 公式アカウント
その日の芦ノ湖の風景をLINEで発信しています。ぜひ友達登録してご覧下さい。